日本から送り届ける一台一台にユーザーがいる

シンクロジスティクスの一木です。

今回は、船積みの現場作業について改めて感じたことを、皆さまと共有させて頂きたいと思います。

 

車を受け取るユーザーの反応は?

最近、ある企画で船積みの現場に出向き、バンニングなどの作業に立ち会う機会がありました。現場作業をひと通り見て、もっと丁寧に、もっと効率的にできる余地がありそうだと感じました。

例えば、コンテナに車を積むときに、ネジを取ってタイヤを外します。そのネジやタイヤをどうするか。外した状態のまま、車の中に放り込んでおけばよいでしょうか?

コンテナに車を積むことだけが目的であれば、それでいいかもしれません。しかし、忘れてはいけないのは、一台一台の車にユーザーがいるということです。ネジがバラバラのままでは紛失しやすいですし、どのタイヤのネジなのかもわからなくなってしまいます。むき出しのタイヤで内装が傷ついてしまうかもしれません。そのような状態の車を受け取るエンドユーザーは、どう感じるでしょうか。

 

期待通りの品質で送り届けるために

日本の中古車は品質と状態の良さが世界的に評価されており、所得水準が低い発展途上国からも根強い需要があります。例えば、仕向地がアフリカ南部のマラウィだとします。マラウィは世界の最貧困国の一つで、年収は日本円で約2.5万円。彼らにとって、日本の中古車は村じゅうのお金をかき集めてやっと買えるような高価で貴重なものです。

村の代表者が選んだのは、1万ドル(約140万円)の日本のハイエース。平均年収の50倍以上です。みんなで待ち望んでいた日本車がようやく到着し、ドアを開けたときに、パーツが散乱していたり、「ネジが足りない」「タイヤを積み忘れている」ということが起こったら、ショックを受けるでしょう。怒りの矛先は、手配をした代表者に向いてしまうかもしれません。

車の状態はユーザーの満足度に直結しますから、「エンドユーザーにどう感じてもらいたいか」を起点に作業を組み立てることが大切です。先ほどの例では、外したネジはビニール袋にまとめ、どのタイヤのネジなのかをわかりやすくしておくとか、タイヤは袋に入れる、または後部座席で多少の汚れを容認できる場所に置く、などの改善案が考えられます。

すべての車にユーザーがいることを念頭に置けば、一つひとつの作業を丁寧にできるようになりますし、ユーザーの満足度向上にもつながります。これは単に、作業手順をマニュアル化しようという話ではないことを申し添えておきます。

 

仕組みづくりで「質と効率」を両立させる

「いちいち丁寧にしていたら間に合わない」「月1万台もあれば、数パーセントはダメージや遅延が発生しちゃうよね」と思ってしまう方がいる場合があります。

しかし、作業場のレイアウトや工程、準備物を見直すなど、仕事のプロセスを改善することで、質と量の両立は可能です。

例えば野菜炒めを作るとき、必要な野菜があらかじめ最適なサイズと形にカットされていて、肉や調味料と一緒に使用順に並べられていたら、あとは順番に炒めて味付けするだけです。冷蔵庫から野菜を出して洗って、一個ずつカットし、炒めながら調味料を棚から出して…という作り方より効率的ですし、「ニンジン入れ忘れた」「炒める順番を間違えた」みたいなミスも起こりづらいです。

また、プロセスを改善する上で重要なポイントは、車を受け入れる際に輸出計画などの情報も入手しておくということです。私も実践していますが、「どの車が、どの仕向地に出る」「1ヵ月でこれくらいの台数を輸出したい」といった情報を顧客へのヒアリングやシステム上のデータ連携等で把握しておくことで、現場作業の見通しを立てやすくなります。

一人ひとりが頑張ることも重要ですが、船積み量は月に数千台・数万台の規模になるため、輸出計画や見通しに沿って準備を整え、毎日の作業を平準化するような仕組みづくりが不可欠です。

もちろん、やむを得ずダメージや遅延が発生してしまう可能性はゼロではありません。ですが、日本から送り届ける一台一台にユーザーがいるのですから、船積みの作業や手配に携わる人はゼロを目指してほしいと思います。

このことを全員が意識して取り組めば、より高品質でスピーディな船積みが実現できます。

 

最後までご覧頂き、ありがとうございます。