安くて品質の良いサービス?〜価値を説明することの大切さ〜

■中古車輸出における物流事業者のビジネスモデル

シンクロジスティックスの一木です。

今回は私達が提供しているサービスの対価について、考え方を共有させて頂きたいと思います。当社が提供するサービスは様々な物流の機能を組み合わせて、スムーズにモノが流れる仕組みをつくることです。良く「シンクさんは、自動車のVanningに強い会社ですよね。」とお褒めの言葉を頂くことがございます。それ自体は嬉しいお言葉なのですが、私自身は「まだ、私達の価値をお伝えしきれていない。」と感じています。

確かに、輸出先国によってはタイトなVanning Plan に対応する必要が出る場合もございます。当社が一貫輸送サービスとして提供しているモンゴル向けのような国は、海上輸送、中国鉄道、モンゴル鉄道といった輸送ルートを通るため複数回のコンテナの積み替え作業が発生いたします。そういった仕向け地においては、ダメージリスクをできるだけ少なくするために強化ラッシングという補強を行います。具体的には、ラッシング時におけるワイヤー本数を増やしたり、接触の可能性があるバンパーやバックドアといったパーツの取り外しを行なったり、タイヤの取り外しを実施することで車輪の転がりを防いでいます。車両の取り扱いに特化した現場のエンジニアがいるからこそ出来るサービスですが、こういった機能も全てはお客様のビジネスの成功を中心に”スムーズにモノが流れる仕組み”を考えているからこそ磨かれた機能であることを、ぜひ皆さまと共有させて頂きたいです。

■一人よがりのデートプラン

仮に私がこのバンニングとしての物流機能だけを売りにした会社を目指すとしたらどういった取り組みを行うでしょうか?画期的なバンニング用の資材を開発するかもしれません。一本、一本のバンニング作業の時間を計測して、タイムを縮めるような取り組みを行うかもしれません。物理的に6台までしか積み込みができない車両を解体し、10台を積み込めるような体制を整えるかもしれません。そういったニーズも世の中にあるかもしれませんが、ほとんど意味のない活動になると思います。私はこのような取り組みを新卒社員に対して”一人よがりのデートプラン”として紹介しています。意中の異性がいたとして、相手の好みや性格、ライフスタイルを意識していないデートに誘ってもついて来てくれないどころか、相手の大切な時間を奪ってしまう行為になる例えとして説明しています。

もしそういった時間があるならば、真っ先にお客様にお話しを伺い「貴社のビジネスを成功させるのに、物流面でお困りのことはございませんか?」といったヒアリングをするべきです。そのお困りごとを解決する仕組みをつくるからこそ、お客様に選ばれるのであって、決して技術力が高いからだけでお客様に選ばれているのではございません。実際に私はバンニングをすることは出来ませんが、技術が優れているだけの協力会社様とお取引をすることはございません。技術や経験に加え、世の中に必要とされているサービス創りに取り組む姿勢があるかが最も価値を増やすために重要なポイントになります。

■水屋(単純な取次)とロジスティックスの違い

当社のビジネスモデルは、ノンアセット型と呼ばれる方式をメインで組み立てており、物流の設備や現場の作業スタッフに関しては協力会社様と組むことで調達する場合が多いです。お客様のリクエストに対し各利害関係者のメリットやデメリットを考慮しながら、サービスを組み立てていくことは非常に難しく、論理的な思考力に加えて人間力も必要になります。モノを運ぶ、積み込む、手続きをする、書類を作成するといった機能を”統合”していくプロセスは製造業でラインをつくる生産技術職に似ていると感じます。いわゆる水屋(単純な取次)とは付加価値がまったく違い、そういった人材の採用や育成には、大きな投資が必要になることも申し添えておきます。コロナ渦の中で、最も廃業が多かった業種と言われるのが運送業と言われています。https://www.netdenjd.com/articles/-/262943 様々な要因があるかとは思いますが私は”提供する価値を増やし続け、値上げを説明出来なかった”ことに尽きると思います。モノを運ぶだけの機能として会社を組み立ててしまうとどうしても値段だけの勝負になってしまいますし、課題を解決するような提案を行なっていてもその価値をお客様に対してご説明できていなければ、ただの人の良い担当者として扱われてしまうことになります。結果としてこういった人材は、スピンアウトをして自分で会社をつくったり、給与の良い別の業界にいってしまったりしていくことになります。優秀な人材の流出は、中長期でかならず貿易のボトルネックになります。今後も、私達はロジスティックスとして価値を高めながら、その価値の大切さを発信し続けていきたいと思います。

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